皆さん、歯周組織再生療法ってご存じですか?
それは、あるお薬を使って、歯の周りの失われた組織を作り再生するというものです。
そのお薬には、今現在、主にエムドゲインとリグロスという2種類があります。
今回は、保険でできるリグロスについてご説明します。
リグロスとは、細胞を増やす成長因子のことです。
この薬の作用により、歯周病で破壊された歯周組織の周囲にある細胞を増やしたり、血管を作って細胞に栄養を送り込み、破壊された歯周組織の再生を促進します。
【適応症】
歯周病により、歯を支える周りの骨(歯槽骨)が部分的に失われている歯に行います。
骨欠損状態は、以下のように分類されます。
1壁性や2壁性では、塗布した薬が、骨欠損部にとどまらず流れ出てしまうため、基本的に3壁性などの深くて狭い垂直性骨欠損に使用されます。
【費用】
1歯に行う場合、概ね1万円くらいです。
【治療の流れ】
歯周基本治療
1.上下の歯の周りの浅い場所の歯石除去を2回に分けて行います。
↓1週間後以降
2.歯周検査を行います。
3.部分的に深い場所の歯石除去を、麻酔後に行います。
↓2週間後以降
4.歯周精密検査を行います。
この結果で適応にあたり必要な場合、歯周基本歯周組織再生治療を行います。
↓1ヶ月後以降
5.歯周精密検査による再評価を行います。
【方法】
1.麻酔
麻酔ができるだけ痛くないように、歯肉の表面の浅い所に、表面麻酔を塗ります。
その後、注射による深い所の麻酔を行います。
2.切開
歯肉をメスで切り、開きます。
3.根面洗浄
術部の細菌感染物や不良肉芽組織を除去し、十分に洗浄します。
4.リグロスの塗布
きれいになった術部にリグロスを塗布します。
5.縫合
開いた歯肉を元に戻し、隙間ができないように縫合し、閉じます。
抜糸は、手術日から1~2週間後を目安に行います。
【手術後の注意点】
・術後の歯肉は、感染や傷つきやすいため抜糸するまで、手術部位に触らないようにして頂きます。
・手術当日は、飲食は可能ですが、強いうがいや、飲酒などは控えて下さい。
縫合部が開いたり、治癒の妨げになることがあります。
・その他、手術部位の歯磨きの仕方や時期などの注意点は、歯科医師、歯科衛生士の指示に従って頂きます。
歯周病は、自覚症状の少ない病気です。
気付いた時には進行し、歯がグラグラで残せない(再生療法ができない)こともあります。
その前に気づくには、歯科の定期的な受診が大切です。
早めの受診により、歯周組織再生療法という選択肢が増え、歯を守れる可能性が増えます。
それ以前に、そこまで悪くなることを防ぐこともできるかもしれません。
また、このような外科治療でなく、歯周基本治療やその後のメンテナンスで、歯周病が進行するのを
抑えることも大切なことです。
まずは、歯科検診の受診をしてみては、いかがでしょうか。