赤坂デンタルオフィスからのお知らせ

歯周病による全身に及ぼす影響 西明 仁

UPDATE : 2011/11/14


西明 仁

[歯周病による全身に及ぼす影響]
歯周病の症状は、歯周病菌に対する免疫系が歯肉部分で過剰反応することで悪化していきます。通常、免疫反応は身体を守るために働くのですが、歯周病細菌が歯肉に刺激を与え続けると、歯周組織のマクロファージやリンパ球が産生する酵素やサイトカインなどが、局所(歯肉)に蓄積し組織を破壊します。酵素類はコラーゲン繊維などを切断・溶解する作用を持っています。サイトカイン類はIL-1(インターロイキン1)、IL-6(インターロイキン6)、破骨細胞活性化因子(OAF)、TNF(腫脹壊死因子)、など多彩な生理活性を示す炎症性サイトカインと呼ばれるタンパク質です。これらは、血液中に入っていろいろな全身疾患に悪影響を及ぼします。
局所的に産生された炎症性サイトカインは、歯周組織に対して悪影響を及ぼすだけでなく、血液を介して全身疾患にも影響をもたらします。最近の研究では、歯周病は生活習慣病の一つとして考えられ、糖尿病・高血圧などのメタボリックシンドローム、心臓疾患(心筋梗塞、細菌性心内膜炎)、脳血管障害、早期低体重児出産、誤嚥性肺炎、骨粗鬆症、などが歯周病に関連する疾患とされています。歯周組織に限定されるという概念から、全身にも影響を与えることから歯科のみならず医科でも注目を浴びています。
また平成23年9月24日(土)に山口県下関市海峡メッセ下関において第54回日本歯周病学会2011秋季学術大会「連携医療における歯周病治療」というテーマにて開催され、出席してきましたが、今後、歯周病における全身疾患との関わりについて、歯科と医科がどのように連携していくか重要視され、報告されています。

[歯周病の特徴について]
1. 朝起きた時、口腔内がネバネバする。酸っぱい感じがある。
2. ブラッシング時に歯肉から出血がある。痛みを伴う。
3. 口臭がある。
4. 歯肉が赤く腫れている。
5. 噛むたびに違和感がある。
6. 歯が長くなった様な気がする。
7. 前歯が突出したり、歯との間に隙間が出てきた。
上記の様な症状が一つでもあれば歯周病の可能性が疑われます。すぐに受診されてください。

[歯周病の発症と進行]
どのようにして歯周病は発症するのでしょうか?原因は歯に付着しているプラーク(歯垢)です。口腔内にはおよそ約400種類の細菌が存在し歯垢1r中には約10億個の細菌が存在し歯周病をひき起こします。中でも歯周病を引き起こす細菌はPorphyromonas gingivalis, Actinobasiillus actinomycetemcomitans, Prevotella intermediaなど10種類以上の細菌が歯周病の進行に関わっています。ですから日常生活のなかでしっかりとプラークコントロール(歯磨き)が出来れば歯周病は予防することはできます。ただ例外的に歯周病細菌に対して遺伝的に抵抗力の低い方もおられます。

歯周病の症状は初期では歯肉からの出血、しみる程度で痛みは殆ど伴いません。しかし進行し中等度になると、歯肉の腫脹、出血、排膿、また体の免疫応答の低下時(疲労、ストレス、寝不足、風邪etc...)に痛みを伴う様になります。体調が回復(免疫応答の上昇)したり、歯周ポケットから出血、排膿が出払ってしまうと、炎症は消退し腫れが退き、痛みは消失し治ったかに思うのです。そこが歯周病の恐ろしいところです。痛かったり、痛くなかったりを繰り返しているうちに歯槽骨は破壊され、歯周病は確実に進行しているのです。ご自身で歯に動揺があり、噛みにくい、膿、出血がある、強い口臭があるetc...の自覚症状が認められましたら、確実に重度歯周病に移行している可能性があります。
この時に初めて歯科医院に受診される方が殆どです。重度に進行した歯周病は歯を支えている歯槽骨が殆ど無くなっているため歯を抜かなくてはならない状態まで進行していることが多く認められます。

[歯周病の治療]
1. 基本治療
初期、中等度、重度歯周病における基本的な治療です。歯肉溝(病的では歯周ポケット)の深さを測定し、歯垢、歯石を除去します。(スケーリング、ルートプレーニング、ブラッシング)スケーリングは歯、根表面に付着した歯垢、歯石を機械、器具にて除去することです。ルートプレーニングは根表面を滑沢にする方法です。これにより歯周組織が改善され歯肉溝の深さが浅く(1〜3o)維持されれば、メンテナンスに移行します。
2.歯周外科治療
歯周基本治療で一部ポケットの深さが改善されず(4o以上)、プラークコントロールが困難な場合や、歯周病が進行し、歯槽骨の吸収が進んでしまった場合、外科的に歯周ポケットの深さを減少させる手術(切除型)があります。また生体材料(エムドゲイン、β‐TCP(第3リン酸カルシウム)、アテロコラーゲン)を用いて、部分的に失われた歯槽骨を再生させる手術法(自費)を行う場合もあります。治療により歯周組織が改善され、歯周ポケットの深さが浅く(1〜3o)維持されればメンテナンスに移行します。
3.メンテナンス
歯周病の再発防止と健康を維持して頂くために、定期的に検査と予防処置を行うことが重要です。歯周病の再発を防ぐには各個人にあったメンテナンスプログラムに参加され歯周病のチェックならび歯垢、歯石の除去などのクリーニング(PMTC)を行うことが何よりも重要です。

[歯周組織再生治療]
歯肉切除型手術法でも解決できないくらい歯周病が進行している場合は、最先端の歯周組織再生治療が必要となります。再生医学のなかで実際に患者様に治療する再生治療を行っているのがティッシュエンジニアリングです。歯周組織再生治療は組織細胞工学(ティッシュエンジニアリング)に基づいたもので、組織が回復する細胞(幹細胞:stem cell)、足場(スペース:scaffolds),増殖因子(成長因子:growth factor)の3つの要素を原理とし ており、これらの要素が最適な環境下で、適切な時間作用し合い、統合されて再生が可能となります。3つの要素のうちどれか一つ欠けてもティッシュエンジニアリングによる治療効果は得られません。現在、再生治療においてエムドゲインゲルは、歯周病で失われた組織(歯根膜、歯槽骨、セメント質、歯肉)を再生させることができる再生用材料(成長因子:growth factor)です。

エムドゲインゲルはスウェーデンのビオラ社で開発された新しいブタ歯胚歯周組織使用歯周組織再生用材料です。エムドゲインゲルの主成分(エナメルマトリックスデリバティブ)は、子供の頃、歯が生えてくる時期において重要な働きをする蛋白質の一種です。現在の科学水準に基づく高い安全確保の下、幼若ブタの歯胚から抽出精製したもので、2009年3月現在、世界44カ国にて使用されています。この治療は高度な知識、技術はもちろんのこと、臨床経 験がなければ難しい治療となるため、受けられる医療機関がまだまだ少ないのが現状です。