赤坂デンタルオフィスからのお知らせ

高齢者歯科治療の留意点

UPDATE : 2011/05/21


案西 浩平

5月20日(金)福岡市歯科医師会主催で、九州大学病院特殊歯科総合治療部准教授 安部喜八郎先生による「高齢者の歯科治療時の留意点」の学術講座が行われ、当院からは理事長,古田晶子先生、石井暁先生,森川真弥衛生士,池嵜幸代衛生士が出席した。
はじめに、高齢者の口腔内に多く発現する疾患の解説があり、有病高齢者治療の注意点及びスタッフとの連携について下記のような講義が行われた。

T.口腔内によくみられる疾患とその対処
a口腔カンジダ症:口腔ケア及び抗菌剤投与b口腔癌:急性期から退院後まで口腔ケア.放射線治療直後の抜歯は控える.c扁平苔癬:口腔ケア及びステロイド投与.200例に1例は癌化(前癌病変).d白板症:口腔ケア及び薬物療法,外科的切除.口腔カンジダ症との鑑別.前癌病変.e義歯性線維腫:口腔ケア及び外科的切除f外歯瘻:原疾患の治療,瘢痕組織切除g褥瘡性潰瘍:癌性潰瘍との鑑別.硬結を認めず,原因除去で改善.h舌痛症:閉経後の女性に好発.癌不安の解除.

U.偶発事故対策
歯科治療時の死亡直因は@急性心不全A窒息BショックC脳卒中の順と報告され、その原因疾患(持病)の順位は@心疾患A脳血管障害B高血圧C糖尿病である。
65歳以上の高齢者の90%以上が何らかの疾患に罹患しており、来院時に、スタッフは@初診であれば既往歴,服用中の薬等問診をしっかりとるAその日の体調を確認するB呼吸の状態を読み取るC薬の飲み忘れがないか確認するD診療台の楽な体位を尋ねるE聞き取りの際不安,緊張を取り除く等行う。
原則として、治療中5秒以上の過度なストレスは避けるべきであり、@局所麻酔A疼痛刺激B精神的緊張は要注意である。特に死亡事故の3割は局所麻酔に関連して起きており、モニターを付ける、スタッフが手を握る、酸素投与の準備をする等の対策が求められる。
また、感染予防として、外科処置前に歯磨き含嗽により90%,イソジンやネオステリングリーン含嗽により98%細菌が減少すると言われている。さらに、タービン回路に侵入した細菌も、10秒の空ぶかしで88%,40秒で98%削減できると言われおり励行を勧める

V.有病高齢者の歯科治療
高血圧:体調と降圧薬内服を確認し、午前中の診療が望ましい。カルシウム拮抗薬内服患者は歯周疾患が増悪しやすいので、口腔ケアは必須である。治療時は、局所麻酔と疼痛のコントロールに配慮し、収縮期血圧200mmhg以上或いは拡張期血圧100mmhg以上にて治療は中断する。@局所麻酔薬に含有される血管収縮薬の濃度を滅菌下希釈するAストレスが増強すると多量のカテコラミンが分泌されるので無痛処置を心がけるB止血にボスミンを使用しないC診療体位の希望を尋ねる等対策を講じる。
狭心症:歯科治療の対象はNYHAの分類でU度迄であり、午後の診療が望ましい。発作の可能性がある場合、治療前3〜5分にニトログリセリンの舌下投与或いは2時間前にフランドルテープを貼付する。治療時は、局所麻酔に注意を払い、疼痛のコントロールを行う。
心筋梗塞:歯科治療のストレスレベルにもよるが、原則として、発作後6ヵ月の間隔を空けるのが望ましい。バイアスピリンとワーファリンは、対診後、極力休薬しないで治療を行いたい。カプロシンへの変更は必要ないと思われる。PT-INRの数値が2.5〜3.0以下が通常治療の適応であり、抜歯の際は止血プレート,コラーゲン等を準備する。局所麻酔は、伝達麻酔や歯肉頬移行部への刺入を避け、出血を最小限に止める。
感染性心内膜炎:スケーリング以上の治療を観血処置とし、アモキシシリン20mg/体重1kgを術前投与する。先天性心疾患や心臓弁膜症等の患者が歯科治療により引き起こす可能性もあり要注意である。
誤嚥性肺炎:高齢者の直接死因の第1位は肺炎である。口腔ケアによる予防と摂食嚥下訓練のチームアプローチは必須である。
骨粗鬆症:BP製剤に関連した骨髄炎については、ガイドラインに従って抜歯をしても50例に1例発生したという報告もあり、3ヵ月休薬には確固たるエビデンスはないと思われる。また、ゾメタ等を月1回外来で静注されている症例もあり盲点となり得る。抜歯時の骨露出は極力避けたい。
糖尿病:HbA1cの数値を8以下にコントロールすれば、抜歯等の外科処置は適応である。しかし、合併症の低血糖発作に備え、ジュースや角砂糖を用意したい。(案西浩平記)